東証スタンダード市場に上場する新京成電鉄株式会社(証券コード:9014)は2022年4月28日、同じ京成グループの京成電鉄株式会社(証券コード:9009)と連名で、京成電鉄を株式交換完全親会社、新京成電鉄を株式交換完全子会社とする株式交換を行うことを決議したことを発表しました。
京成電鉄においては簡易株式交換の手続きにより株主総会の承認を受けずに、新京成電鉄においては2022年6月28日開催予定の定時株主総会における特別決議による本株式交換契約の承認を受けた上で、2022年9月1日を効力発生日として行われる予定です。
本株式交換の効力発生日(2022年9月1日予定)に先立つ 2022年8月30 日に、 新京成電鉄の普通株式は株式会社東京証券取引所スタンダード市場において上場廃止となる予定ということです。
最終売買日は2022年8月29日になります。
新京成電鉄グループについて
1946年10月に設立された新京成電鉄は旧陸軍鉄道連隊演習線を引き継ぐかたちで1947年12月に新津田沼駅〜薬園台駅間の2.5kmを開業。昨年会社設立75周年、今年開業75周年を迎えます。
1955年4月に松戸駅までの全線を単線で開通させ、1975年2月には新津田沼駅〜松戸駅間を複線化(新津田沼駅〜京成津田沼駅間は現在も単線)。2006年12月からは京成電鉄千葉線への乗り入れを復活、その後も新型車両の共同開発など京成電鉄との連携を強めていました。
鉄道事業のほか1949年1月からバス事業を開始、1955年2月には不動産業に参入、さらに 1970 年代以降はサービス業等への参入を行い、現在では新京成電鉄及び子会社7社、関連会社2社 により構成されています。
新京成電鉄新京成線の特徴
新津田沼駅〜松戸駅間、新津田沼駅〜京成津田沼駅間からなる新京成電鉄新京成線の沿線には高度成長期に開発された団地住宅が多く立地しており、JR常磐線・JR武蔵野線・北総鉄道・東武鉄道野田線・東葉高速鉄道・JR総武線・京成電鉄といった複数の路線と連絡するバイパス路線のような役割を果たしてきました。
そういった立地条件から、沿線地域の少子高齢化や生産年齢人口の減少が見込まれていましたが、2020年2月以降は感染症拡大による人流減少が続いています。
プレスリリースには「通勤・通学輸送を 中心とした地域内輸送を主力事業とする新京成電鉄グループにおいては、同業他社よりも比較的 早い段階で業績が回復すると見込まれているものの、足元では運輸業において輸送人員が減少する等の影響を受けております」と記載されており、経営環境は将来的に不透明さのある厳しい状況のようです。
京成電鉄との関連
新京成電鉄新京成線の元となった旧陸軍鉄道連隊演習線の跡地は、京成電鉄と西武鉄道とが、当時跡地の管理をしていたGHQ(連合軍総司令部)に働きかけていましたが、以前から鉄道連隊と深い関係にあり千葉県を主要な営業基盤としていた京成電鉄に1946年3月に使用許可が下ります。10月18日に台東区にあった当時の京成電鉄本社で設立総会が開かれました。
会社名は当初の下総電鉄から新京成電鉄に変更され、京成電鉄の子会社としてスタート。京成電鉄から中古車両を購入しながら運行していました。その後も京成の旧型車から流用した車両を使用していましたが、その後800形・8000形・8800形・8900形といった自社専用車両を投入。ベッドタウンとなった沿線を支えていました。
しかし2006年に京成電鉄千葉線に再び乗り入れるようになることやコストダウンのためにN800形は京成新3000形を基本とした京成グループ標準車体を採用。最新型の80000形も京成グループの標準車両として京成電鉄と共同で設計するなど(京成3100形と共通設計)、車両の運用面でも京成電鉄と関係を深めていました。
子会社化のメリットは?
これまでも京成電鉄は新京成電鉄を持分法適用関連会社として様々な面で緩やかな連携を行っていましたが。経営資源の効率的な利活用や機動的な意思決定が必ずしも充分に行われていない状況が合ったようです。プレスリリースでは京成電鉄と新京成電鉄との取引や合理性などについて、第三者取引との企画検討が必要なことから両社の協業によるシナジー追求が必ずしも優先されない課題があったとのこと。
グループ間の経営資源を効率的に利活用し迅速な意思決定を行う体制を早急に構築し、両者の連携をさらに強化し、京成電鉄グループと新京成電鉄グループが一体になって経営を遂行する目的があるようです。
株主交換の日程と方式
2022年4月28日に株主交換契約を締結した両社。2022年6月28日に開催が予定されている定時株主総会で承認されると、新京成電鉄株式会社は2022年8月30日に上場廃止される予定です。最終売買日は2022年8月29日。
京成電鉄を株式交換完全親会社、新京成電鉄を株式交換完全子会社とする株式交換は2022年9月1日を効力発生日として行われる予定です。
新京成電鉄株式1株に対して、京成電鉄の普通株式0.82株が割り当て交付されます。
株式の売買については、ご利用の証券会社にお問い合わせ下さい。
参考文献
- 崙書房編『新京成電鉄沿線ガイド』(1995年、崙書房)
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